ようやく田植えが終わった。
「大変そうだから手伝いに行くぞぉ」という方もいたが、「チ、チ、チ、チ(と、人差し指をたて左右に振りながら)」そんな訳にはいかない。
都会の人は田植えが一番忙しく、人の助けが最も必要な時期だと「勘違い」している。田植えは大変でないとは言わないけれど、一株一株手で植えていた60年ほど前と違い、田植え機械で行う今は、他の作業と比べて特別に大変だという訳ではなくなっている。
雪解けとともに始まったなが~い農繁期ももうじき一区切り。日々、これまでの成果が緑の早苗の広がりとなって拡大していく。ここまで来ればやれやれ・・だ。そんなところに都会から手伝いに来られたら、それだけでまた一苦労。どうせ手伝いに来てくれるなら農農繁期をはずして来てくれた方がナンボか楽だよな。
ところで今日(6/8)、車のハンドルを握って町まで買い物に行って来た。
ヤッホー!!2年ぶり!
大きな病気の後遺症で、2年ほど前。デスクワークをしていたら、「フッ」と意識が飛んだ。病気のあと、過度なストレスがかかるとそうなることもあるらしい。言われてみたら、母親の介護で夜も昼もなく・・かなりキツイ日々が続いていた。
「お薬も出しているし、もう繰り返すことはないと思いますが・・。」
それでも医師の判断でなんと、2年間の運転停止だと!
車が無ければ不自由極まりない田舎社会。どこに行くにも妻や友人に頼み、連れて行ってもらわなければならなかった。疲れている彼らにビールを2~3本・・などとはとても頼めない。彼らも大変だったと思う。俺は俺で申し訳ないと思っていたし、それだけでなく、常に隣に人がいる窮屈さ。一人になれないことも辛かった。だけどようやく運転免許証が戻って来た。どこへでも行ける。一人の時間もある。ビールも買いに行ける。
その間、様々な「気づき」を得た。あなたがもし、俺と久しぶりに会ったのなら、「あれつ、人が変わったね。」となるかもしれないよ。
しばらく連載を休んでいたのは、家に閉じこもり、ろくなことを考えなかったからだ。田植えは終わったし、運転免許証も戻って来た。あの人にもこの人にも会いに行ける。さあ、これからだ。
つづく
菅野芳秀(共同代表理事)
佐藤藤三郎さん(農業)、山形県上山市狸森在住。昭和10年生まれの86歳。
藤三郎さんが暮らす地域は奥羽山系の中の山合の村。
果たしてここを車が登れるのかと思えるほどの狭く急な坂道を登って、下って、また登って・・の所にある。
藤三郎さんはその地で田んぼを作り、炭焼きを行い、牛を飼いながら、家族を支え、子どもを育てて来た。
「牛は、10年ほど前に手放したよ。3年前、83歳の時にコメ作りからも引退した。」今は奥さんと二人でわずかに野菜を作り、近くの直売所に運んでいるという。
「田んぼかい?今は雑草が生えたままになっている。田んぼに気の毒でよぉ。田んぼには悪いことをしたなぁと今も思ってるんだ。」
藤三郎さんはペンを持つ百姓として、高畠町の星寛治さん、上山市の木村迪男さん、今は亡き山形市の斉藤太吉さん等と共に山形県で最も有名な農民の一人だ。
農業、農村の立場から現代を捉え、厳しく批評する文化人。
文筆家。それでいて決して偉ぶることなく、いつも親しみやすい笑みを湛えている農民知識人。
尊敬する先輩だ。
過日、藤三郎さんのお話を聞く会をもった。
お話は2時間にも及んだが、いずれも興味深い話だった。
「今は、村祭りも維持できなくなってしまっている。若い人が村に生き残られる。それも堂々と。そんな農村社会を作れたらなぁと思う。」
「兼業化することが村を守ることにつながる。農業を大規模化するのではなく、農+農外収入で村と農業を残す。そんな農村社会がいい。」
日本の農政は長いこと兼業農家を農業の発展を妨げる邪魔な存在、淘汰の対象として来たし、今もその農政は力を失ってはいない。
小農の離農が途切れることなく続いている。
藤三郎さんの話はそれとは真逆の話だ。
俺はその話を聞きながら、ロシアの「ダーチャ」(検索して知ってほしい)を思い浮かべ、置賜自給圏が構想する市民皆農、国民皆農の未来を思った。
「経済をグローバル化するのではなく、小さい農業でいいから、楽しく生きられる社会にしたいものだと思う。」
藤三郎さんの話に引き込まれ、いつしかメモを取ることもできなくなっていたが、最後に力を込めて話した言葉がいつまでも耳に残った。
「求められているのは『新しい社会主義』だと思うよ。」
この一言に、藤三郎さんの歩んで来た足跡、これからも歩み行く方向が凝縮されているように思えた。コロナカ禍のなか、久しぶりに出会えた学びの時間だった。
2022年1月30日記
つづく
菅野芳秀(共同代表理事)
ご無沙汰しています。
どうにかここまでたどり着きました・・本当にこんな感じで・・岸辺に着いてもなお、ヒーヒーあえいでいます。
「七転八倒百姓記-地域を創るタスキ渡しー」(現代書館)
1977年、百姓として生きようと志を立てて村に帰ったのだけど、「学生運動をやっていた過激派」。こんな包囲網がすでに地域中にあふれていた。さらに百姓1年目から始まった「減反」を拒否したことで、そこに「農協や行政に従わない男」、「村に同調しない男」・・・こんな評判が加わった。生きづらい空気に満ち溢れる。
口笛を吹きながら、七転八倒・・。やがて近隣の農家や、地域の支持を受け、農薬の空中散布を中止に追い込み、そこからレインボープランという循環型まちづくりに漕ぎ出していく。
「自分史」として書くならば、市井の一人でしかない私には始めからその資格はないし、出版する意味もない。
私が百姓のそんな七転八倒記を書けるとしたならば、農民であるかどうかを問わず、同じような孤軍奮闘の日々を送っている友人たちに、何らかの連帯のメッセージを伴ったものでなければならず、また同時に私の体験が少しでもその方々のお役に立てること。これがあって始めてその資格ができ、出版する意味もあるだろうと思ってきた。果たしてそのような一冊になれたかどうかは、今でもまだ心もとない。(本文あとがきより)
出版社よりありがたい内容紹介をいただきました。
内容紹介(出版社より)
著者は、長年にわたり農民として可能性に満ちた地域を守り、次世代に手渡すために、減反拒否、村ぐるみの減農薬運動、生ゴミと健康な作物が地域を循環するまちづくり等々に取り組んできた。グローバリズムを背景に小さな農家が切り捨てられていく危機に直面しながら、地域自給圏の創出、都市と農村の豊かな連携に今も力を注ぐ。アジア各国の農民リーダーと共に変革を生み出し、互いに学び合う関係を築いてきた著者のバイタリティーが、リズム感ある筆致から溢れ出す。
この本を、年齢を問わず同じ時代を「七転八倒」しながら生きている、まだ見ぬ仲間たちに。そして同じ世代の仲間たちにも心からの連帯の気持ちを込めて送りたい。特に同世代には「すでに一つの山を越えたし、七〇歳だから」という人もいるが、自分の生き方を決めるのは志と情熱であって、自然年齢ではない。そんなものに左右されてたまるもんか。対象は、よりひどくなって我らの前にその醜態をさらしている。
「帰(かへ)りなんいざ。田園将(まさ)に蕪(あ)れんとす、胡(なん)ぞ帰らざる。」である。ともに参りましょうぞ!
菅野芳秀 山形県長井市寺泉1483
携 帯:090-4043-1315
メール:narube-tane@silk.ocn.ne.jp
2021年10月15日金曜日
置賜自給圏推進機構の代表理事の一人 菅野芳秀共同代表 が長い沈黙を破ってついに執筆活動に入った。その第一弾を置賜自給圏推進機構に連載を開始。タイトルは「おきたまに根をはって」。農家として思想家として菅野節がさく裂するかもしれない注目の第1回。
菅野芳秀(共同代表理事)
個人的にちょっとした出来事があって、自給圏の活動を休まざるを得ない期間があった。その間、あれやこれやを振り返りながら色んな事を考えていた。それらの多くはとても文章に出来る代物ではないが、今回、置賜自給圏の事務局から短文の依頼を戴いたことを機会に、あまり気張らずに考えていたことのひとつ、ふたつを書いてみようと思う。
今回は最初という事もあって、少し背伸びした硬い文章となっているが、その辺は人物の小ささの現われとしてお見逃し戴ければありがたい。
地域づくりに必要なことは、出来るだけ大きな視点に立って遠くを見とおし、地域の可能性を考えて見るということ。時代は大きな転換期を迎えている。どんな転換期か。いささか言い古されてはいるが、本筋は変わらない。工業系が主導した生産効率を何よりも優先した資源収奪型社会から、社会が持続的であることを最優先課題とする生命系が主導する地域循環型社会へ。
この文明史的とも言える大転換期の中にあって、その転換に成功するかしないかの中に、我々が生存し続けることが出来るか否かがかかっている。地域づくりもまたこの大きな文脈を反映したものでなければならない。
私は農民だ。よって、農民の立場からこの大きな転換期に参加しようと思って来た。つまり大きな世界観のなかに農業を位置付け、農を基礎とする循環型社会を作り出すこと。そんな視点に立った地域政策、市民の政策が必要だ。1980年代後半ぐらいからずっと言われている「地球的に考え、地域的に活動する」と言うことである。
これでは駄目だといくら繰り返しても社会は変わらない。難局には対案(地域政策)をもって参加する。その具体的展開を農村の中から考えていこうと思って来た。
さて、転換期とは理想を語る時代である。別な言い方をすれば、大きな夢を語り、それを行動に移す時代ということもできる。理想と夢がなければ取り組む意味がない。理想と夢があってもそれを実行に移さなければ何にもならない。希望に決意を込める。理想を形にすること。転換期とはそのような時代の事を言う。自給圏の出発点もここにあろう。
その視点を持って足元を見わたして見る。そこには我々が棲む大好きな置賜盆地が広がっている。中に分け入れば、もちろんそこには我々が誇る様々な良さがあるが、ここをこうしたいという改善点もない訳ではない。でも、その欠点を指摘する前に大切なのは、まず今そこにある地域を丸ごと肯定するということ。ここまで地域を伝えて来てくれた先人の思いと努力に感謝し、その思いを受け継ごうとするところから地域づくりはスタートする。ここが基本であり、地域づくりの出発点もここにあると思っている。
そこで・・あっ、紙面が尽きた。この続きは次回で。
2021年9月3日金曜日
置賜自給圏ニュース 2017年9月21日木曜日
置賜自給圏推進機構の小関恭弘理事から「オーガニックフェスタ米沢」出店募集のお知らせがきています。
小関理事は「米沢地域有機農業推進協議会」の会長です。
今回で4回目を迎える「オーガニックフェスタ米沢」にぜひあなたの生産品を出店してみませんか。
内容は次のとおりです。
有機農業に関する情報の発信と食の安心・安全に関心のある消費者との交流を図るため、4回目となる標記イベントを下記のとおり開催することになりました。
つきましては、出店募集について下記のとおり御案内申し上げますので、この機会にぜひ御出店いただき、PRや交流の場として御活用ください。
記
1 日 時 平成29年11月12日(日) 9:30~14:00
2 会 場 米沢総合卸売センター P-PAL
(米沢市中田町760)
3 申込締切 平成29年9月27日(水)
*チラシ掲載の都合上、期限厳守でお願いいたします。
4 そ の 他
(1) 多数の申込みがあった場合、出店いただけない場合があります。
その際、イベント趣旨の都合上、有機栽培農産物やオーガニック商品を扱う店舗を優先的に受付けさせていただきます。
(2) イベント当日、各出店者様より商品を提供していただき、来場者を対象とした抽選会を企画しています。
農産物や各店で使える商品券などなんでも結構ですので、御提供賜りますようお願い申し上げます。
御提供いただける場合は、申込書に記載願います。
(3) その他、詳細については別紙出店募集要項を御覧ください。
米沢地域有機農業推進協議会
会長 小関 恭弘
オーガニックフェスタ米沢 出店者募集要項
■開催概要
期日 2017年11月12日(日)9:30 ~ 14:00
会場 米沢総合卸売センター P‐PAL(〒992-0011 米沢市中田町760)
主催 米沢地域有機農業推進協議会
後援 米沢市、山形県有機農業者協議会
内容 地元有機農産物や特別栽培農産物、関連する加工品などの販売、 その他催し物。有機農業や有機農産物普及のためのPR など
予定来場者数 400名
出店者数 20程度
■出店要項
出店要件
①オーガニックフェスタ米沢の趣旨に合致していること(主催の判断による)。
②販売商品に「有機栽培」や「特別栽培」など消費者が一目でわかるよう包装や店頭掲示で表示すること。
③慣行栽培に由来する農産物や加工品の展示・販売は原則禁止させていただきます。有機的生産加工が困難で、配慮が必要な商品を出品希望の場合は、事前に米沢地域有機農業推進協議会の確認をお願いします。
ブース概要 大きさ:2m×2m 付属品:長テーブル(180cm×45cm)2台、椅子2脚
料金 出店料:3,000円/1ブース
電気使用料(申請した場合):2,000円/1口
設備 電気:申込書にて申請ください。
水道:会場2階の設備を使用いただきます。
ガス:なし。使用したい場合は各自でカセットコンロを準備願います。
商品搬入 当日午前8時30分~9時10分 搬入口(北側・南側 2か所)から搬入
申込方法 申込書に必要事項を記入し、FAXまたは郵送にて下記担当までお申し込みください。
申込期限 平成29年9月27日(水)
売上金 全額各店舗の収入
各種申請 飲食物の販売は「臨時営業許可」が必要です。各自保健所に申請してください。
(無料提供(ふるまいや試食)の場合、許可は不要です。)
■申込先
米沢地域有機農業推進協議会 事務局(米沢市農林課内)
〒992-8501 米沢市金池5丁目2番25号
電話:0238-22-5111(内線5008) FAX:0238-24-4541
以上です。
【江口忠博】レインボープラン…「循環型社会」への挑戦(2015年3月20日)
【野村浩志】恋よ来い!「ホワイトデー」は木造駅舎で「恋&鯉」交流会(モニター企画第2弾)(2015年3月19日)
【菊地富夫】生産者からの手紙(2015年2月17日)
【野村浩志】〜おきたまの地酒 · 美味な食材を楽しむ農家&酒蔵列車~おきたま五蔵会&置賜自給圏推進機構列車運行(2015年2月16日)
【菅野芳秀】置賜自給圏ー農の現状から(2015年2月12日)
【菅野芳秀】友人の手紙 (2015年1月11日)
【塚田弘一】塚田農園・歌丸燦工房(うたまるさんこうぼう)のお話し。(2014年12月21日)
(*)置賜自給圏は今、何をしているのか、何を目指しているのか、各理事の視点で語ってもらいます。
本機構の趣旨に賛同される皆様のご参加をお待ち申し上げます。
1)日時:2014年8月2日(土)午前10時 〜 午後12時30分
2)場所:米沢市「置賜総合文化センター」1Fホール
米沢市金池3丁目1−14 電話:0238-21-6111
3)1部 設立総会 2部 記念講演 講師:島根県 海士町長 山内道雄氏
(過疎の海士町をよみがえらせた成功事例をお話いただきます)
4)参加費:無料
5)連絡先(参加ご希望の方はFAXかメールで事前のご連絡をお願いします)
一般社団法人 置賜自給圏推進機構 設立準備委員会
〒992-0031 山形県米沢市大町4丁目5番48号 マツヤ書店ビル3F
電話:0238-33-9355 FAX:0238-33-9354
以上
地域資源を基礎とした「置賜自給圏構想を考える会」
設立総会のご案内
1)日時 平成26年4月12日(土) 13:00~15:30
2)場所 伝國の杜 「大会議室」(2F)
山形県米沢市丸の内1-2-1
電話 0238-26-2666
3)内容
◯設立総会
◯記念講演 「新しいローカリズム-置賜自給圏構想への期待-」 (仮題)
講師 山形大学 人文学部長 北川忠明 氏
4)その他 ご出欠につきましては、4月11日(金)までお知らせ願います。
*)また、当日の参加費は無料ですが、カンパ大歓迎です。
*)託児あります。(お子様1人につき300円。定員15名まで。事前申込必要です。お子様の年齢をご連絡下さい。託児の申込締め切りは4月9日(水)まで)
(託児は定員に達しましたので、締め切らせていただきます)
5)問い合わせ先
地域資源を基礎とした「置賜自給圏構想を考える会」仮事務局
〒990-0021 米沢市花沢町2695‐4(今井医院 西隣)
グループホーム結いのき内
電話 090-3122-5530(井上)
Fax 0238-37-0961
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拝啓 寒さの中にも春の足音が聞こえてくる季節になりました。皆様にはご健勝でご活躍のこととお喜び申し上げます。
さて近年、国ごとの規制や制度の枠組みを越え、世界を一つの市場にして規模と価格とコストの果てしない競争を強いていく、こんな動きが勢いを増し、国内の零細企業、家族農業、地域経済の先細りが進んでいます。
この状況を打開するために、置賜を一つの「自給圏」ととらえ、圏外への依存度を減らし、圏内にある豊富な地域資源を利用、代替していくことによって、地域に産業を興し、雇用を生み、富の流出を防ぎ、地域経済の好循環をもたらすという、新たな視点に立った地域づくりを検討しようという声が大きくなってきています。
そこで、圏内有志が集い、置賜の農業やエネルギー資源と地域との関わりについて、人々の暮らしをつなぐ新しい地域のあり方を考える“地域資源を基礎とした「置賜自給圏構想を考える会」”設立に向けた準備を重ね、「設立趣意書」(案)を作成いたしました。
基礎的生活資源の自立、自給こそ地域づくりの根本とするこの「置賜自給圏」構想は、かつて米沢藩の名君と讃えられた上杉鷹山公の地域づくりと通い合うところがあるように思われます。
つきましては、「置賜自給圏構想を考える会」の設立総会を、多くの圏内有志のご参加を得て、開催したいと存じますので、ご趣旨にご賛同いただき、ご出席くださいますようご案内申し上げます。
敬 具